「隠し剣 鬼の爪」雑感

 山田洋次監督による藤沢周平作品の映画化という事で迷い無く鑑賞決定した今作品。
実は事前情報を全く仕入れておらず、隠し剣 鬼の爪」と「雪明かり」の両短編をひとつの脚本に纏めて映画化した作品だと知ったのは映画館に入ってからでした。


その為、不安を抱きながらの上映開始となったのですが、結論から言うと傑作とまではいかないものの、非常に良質な時代劇映画だったかと思います。
幕末という時代そのままを切り抜いてきた様な美術設定と美しい風景、初めは聞き取り辛く感じるものの素朴な人間性に溢れた“ずーずー弁”、不器用ながらも真っ直ぐに生きる主人公。
んー、本格時代劇というのはこうでなくてはいけません。


脇役も含め俳優達の演技も申し分なく素晴らしかったかです。ただ、松たか子さんだけは少々画面から浮いていたかなぁと。何でしょう、東北の村娘を演じるには存在が異質過ぎたと言いますか、都会的な美しさが仇になっていましたね。
この作品が“華やかな江戸”を舞台にした映画だったら問題なかったのでしょうけど。


殺陣も地味ながらも*1相変わらず見事。
隠し剣シリーズ読者としては「龍尾返し」にニヤリとさせられました(反転)。
「鬼の爪」の描写は、成る程、そうきましたか。
まあ、これは殺陣ではないかもしれませんが(反転)。


兎も角、個人的には満足の行く作品でした。
殺し屋」や「殺し合い」(*グロ注意)*2といった、私好みの映画は他にもあったのですが、やはり秋夜の映画鑑賞は時代劇から始めるに限ります。
山田洋次監督は藤沢ワールドに魅せられている様なので、次も藤沢作品を撮られるしょうね。


(……あ、作品が作品なだけに真面目な雑感になってしまった)

*1:まあ、チャンバラ映画ではないですし

*2:鑑賞前の私にネタバレしたらぶっ殺してあげますからね?(笑顔の下に氷の殺意を隠しつつ)