「ネペンテス」

ネペンテス (MF文庫J)

ネペンテス (MF文庫J)

日常的世界の中に潜む非日常的世界の風景を書いた連作短編集。全編に漂う独特の閉鎖感に、妖しく異様な魅力のある作品。


現実的でありながら微妙にズレている特異な空間を舞台にしているのですが、無理の無い丁寧な文章で構築されているので、比較的すんなりと作品の世界に入り込める事が出来るかと思います。この辺りの巧みさは舞台脚本も手掛ける清水マリコさんの面目躍如といったところでしょうか。
個人的には、第五話「a quirk of Fate」が一番好みの物語でした。


少々地味ながらも粗のない良作と判断。
ファンは無論のこと、清水ワールドに触れた事がない方の入門書としても最適な一冊ではないかと。


どうでもいい事ですが、タイトルとなっている「ネペンテス」*1という言葉の響には不思議と惹かれるものがありますね。


■関連:劇団「少女童話」http://home.digital.net/~ruby/
こちらにある「清水マリコの仕事」で、大きめサイズの書影を見る事が出来ます。toi8氏の美麗なイラストの表紙は一見の価値あり。

*1:和名:ウツボカズラ。食虫植物