「嘘つきは探偵のはじまり」


「俺たち終わりかな」
「始まってもいねーよ」


って言うけどだとしたらゴールはえらく遠いなぁ。


――小説帯より。


ちょっと趣味的に映画を観る方ならピンとくる北野武監督の傑作青春映画「キッズ・リターン*1の台詞を引用した帯。それだけで心の片隅を擽られるというモノ。


そういう訳で本編に目を通す前から物語の持つ色や本質がなんとなく伝わってきたので、其れに合わせたスタンスで読書開始したのですが――や、なるほど。物語のデコレートこそは軽ハードボイルドですが本質は正しく逆走――何の進歩もないヌルい日常の中にあるチョッとした“ウソ臭い日常”の事柄――を描いた青春小説。
ただしレーベルというかこのメディアにおいて読者に訴求されるエンタテイメント性をも逆向きに疾走している内容でしたが。つか、登場するのはむさい野郎とオヤジキャラばかりで女っ気が欠片も無く(正確には二人ほど女性キャラも登場するのですがどちらもチョイ役)ストーリー的にもトコトン地味で気の利いたシャレも無いという仕様は読み手を選ぶどころかターゲット層すら謎。正直、これを楽しめるという方は少ないでしょう。……や、私自身は結構楽しめたりしたのですけど。例えば小悪党にもなれないクズガキ三人のチンケな死にっぷりとか


まあ、低予算の邦画を鑑賞するつもりで読むと丁度いい感じの作品ですかね。華のない地味な話ですが逆にそこが気に入ってます。


■追記
言うまでも無い事ですが、台詞を引用されている「キッズ・リターン」はこの作品とは全く係わり合いのない傑作映画です。一度観賞する価値はあるかと。

*1:

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