『機神飛翔デモンベイン』

機神飛翔デモンベイン DXパッケージ版

機神飛翔デモンベイン DXパッケージ版

評価  :B
満足度:B+ A+ (トゥルーエンド到達後修正)


『機神飛翔デモンベイン』トゥルーエンド後感想(ネタバレあり)


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 さあ、御伽噺をはじめよう!
 絶望も、嘆きも、哀しみも、希望も、正義も、悪徳も、狂気も、叡智も、未来も、過去も、現在も、闇も、光も、次元も、なにもかもを一切合切すべて呑み込んだ  荒唐無稽な! 痛快無比な!
 

 御伽噺(デウス・エクス・マキナ)をはじめよう!
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 云うまでもない事ですが、実に「デモンベイン」な作品でした。
 以前、鋼屋ジンさんの日記かなにかで「劇場版デモンベイン」と例えられていましたが、まさにそんなかんじ。 新旧ヒーロー&ヒロイン勢揃い、再生怪異総登場。新キャラだって活躍しちゃうよ、と。
 「うむ。このような展開は、何歳になっても血湧き肉踊るものだ」
 で、どうやってこういうオールスタープロジェクトな舞台を創り上げるのか興味深いところでしたが、アルという存在を解して物語を重ね合わせるという力技にはまいりましたわ。こーいう離れ業を行なっても作品世界が破綻しないのがデモべの凄いところ。


 今回お話というかシーンの進め方にギャグからシリアス、シリアスからギャグというパターンが多様されていたのは印象的。
 こういうシーンの出し方、テンポは川上稔さんなんかが良く使う手法ですが、それを鋼屋ジンさんが繰り出してくるとはビックリ。 テキストも描写の簡略化がみられますし、前作『斬魔大聖(機神咆哮)デモンベイン』のような場面の散漫性を感じる事も少なかったかと。
 うん。前作より格段に読みやすくなってる。


 あと、詩的文章を挿入したりする所なんかには古典ファンタジー(むしろこの作品の場合「御伽噺」かな?)っぽいフレーバーが感じられてニマニマ。
 この作品では「己の物語を高らかに謳い上げる」ってのはキャラクターにとって重要な事という意味もあるんだろうけどね。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 
 アクションゲームとしては問題ありまくり。
 レスポンスの悪いモーション、画面を把握しづらいカメラワーク、キャラ性能の難バランス、かなり反則的な挙動をする敵キャラ、等など3Dアクションにありがちな問題点を一通り抱えている感じ。
 でも、それなりに楽しくプレイ出来てしまうのはキャラクターの魅力か。
 個人的に動かしてて一番楽しかったのは破壊ロボ。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 あと前作は無論の事、古橋版小説「デモンベイン外伝」も読んでると、かなり幸せになれるかと。
 つか、むしろ読了後にプレイ開始する事推奨。
斬魔大聖デモンベイン―機神胎動 (角川スニーカー文庫)



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


■以下ネタバレ考慮せずにキャラクターについてつらつらと(後で追加するかも)




・大十字九郎
 この作品で誰よりも神よりも己の物語を高らかに謳い上げた最弱無敵の熱血ヒーロー。序盤でこそ微妙にアンニュイというかイマイチ気合入ってねぇんじゃねえ? という油断しまくり良いとこ無しな弄ばれ加減でしたが、デモンベイン復活してからは熱血しまくりステキ過ぎ。「助けるに……決まってんだろうがッッッ!!」「――何だって出来るさ」と相変わらず熱い英雄魂に背中で語る親父魂が加わってエライことに! 


アル・アジフ
 九郎と一緒にお風呂に入るラブラブぷりには悶えさせていただきました。一番のハアハアポイントは九郎に頭を撫でられるシーンだけどな! でも、今回は囚われのお姫様&お母様役なので終盤に入るまで出番が抑制。……そのぶん復活してからがタイヘンな事になりましたが。あのマイウェイっぷりはすべての物語を知るゆえかそれとも母親ゆえか。「委細承知!」って受け答えはよかった。


・大十字九朔
 まっとうに強くて弱い物語の主人公。その正体はいわずもなが。ファザコンと微妙なエディプスコンプレックスがない混ぜになった微笑ましき苦悩少年。そりゃ(真実は別にして)親に棄てられたってのは子供にゃキツイことだしグレもするわな。容姿は母親似。髪の跳ね具合も似てる。九郎の事を「親父」と呼んだけど、アルの事は母親呼称でよばなかったな。真の「デモンベイン・トゥーソード」には良い意味で意表をつかれた。


・アナザーブラッド
 影の主人公。もうひとりの大十字九朔。作中で言われるまで正体が素で解らなかった。つーか、マザコンと微妙なエディプスコンプレックスがない混ぜになった言動で直ぐに気が付こうぜ私。ああでも九朔のパートナーになったのは予想どうり、むしろ予定調和。微妙に容姿がマギウススタイル時の父親似。特に髪の跳ね具合。こっちはアルの事を「お母様」と呼ぶけど、九郎の事は父親呼称でよびませんでしたな。この辺のキャラの特徴の出し方は鋼屋ジンさんがよく使う手法ですね。


・シュリュズベリィ
 初っ端から音速と常識ぶっちぎった登場の仕方に大爆笑。や、すげぇカッコよかったですけど! 大塚明夫さんのボイスは反則的威力。ただ、美味しいところにはかならず登場するけど、物語の内面には関わってこなかったのちと勿体無い気が。ま、クトゥルー読者向けのサービスキャラだと思えば十分な出張り方でしたが。VSクラウディウス戦もありましたし。てか、折角の新人外炉利ハヅキのキャラクターが完全にこの人に喰われてたような。「やるぞ、レディ!」「オーケイ、ダディ!」


・アズラッド
 古橋版「デモンベイン外伝」読者向けのサービスキャラかと思いきや、実は物語の内面にも深く関わってきたキャラ。というか外伝の補完的側面もあったのね、この作品。鋼造(九郎)、アル、ダーレス達の想いはアズラッドにキッチリ届いていたと解ったのは読者としては嬉しい限り。シュリュズベリィとは別のカッコよさを持った好キャラ。あと、この人の声も反則だよね。(というかこのゲームの男キャラは全員そんな感じか)


・ドクターウェスト
 一言でいえば今回も物語的に無敵で不死身キャラで絶頂。イっちゃたヤツに怖いもんナシ! を地で逝くその姿に刻の涙をみたとかみなかったとか。つーか、あのデモべ復活シーンをだれが予想できようか。邪神をマジギレさせてマウントパンチくらったりとか。私を笑い死にさせる気ですか! ああ、やっぱりドクターウェストの存在はデモべに必要不可欠でせすわ。ハヅキと同じくエルザも主人にキャラ喰われた不遇キャラ。


・マスターテリオン
 九郎との絡みが絶無というのは驚いたけど、それ以上にネロとの繋がりが補完された事に驚いた。や、今回「親と子」というテーマが全面に打ち出されているので、この展開も自然な流れなのですが。個人的には、ほぼ誰の目に触れる事もなく静かにそして穏やかに消えていったのが印象的。あと、エセルドレーダの登場シーンは素晴らしいね。健気ですわ。


・ナイア
 やっぱりアナタがラスボスでしたか。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 あと“クリア・エーテル”ってセリフをこのゲームで聞けるとは思いませんでしたわ。