「おっ」と思った小説の冒頭をあげるスレ

 一九六八年に東京の北多摩に生まれた橋本響一は、二十六歳の時に神を映像に収めることに成功した。


  ――古川日出男『13』 


 書き出しから <愚直> とも言えるほどストレートな言霊/一撃を放ってくるフルカワ作品の中でも特に印象深い一文。 そしてこの冒頭がハッタリではないのが更に凄まじいところなのです。


 この文章が、「如何にも <幻想> に寄り過ぎてて慣れないなぁ」 という方の為に、同著者の(手近なところにあった)作品から二つほど一般/ロック/流転/文芸的なものも挙げておきましょう。
 

 まばたき一回のあいだに父親は視界から消えていた。 ――『sound track』
 彼女がバッハの冒険について語る。 ――『ルート350』収録「おまえのことは忘れていないよバッハ」より


 前者は平穏な日常の崩壊/不条理な喪失感を、後者は不思議な状況に対するエクスキューズを感じさせられます。 つうか読め。 (己を物語信奉者と自負するのならば、ですが)


 あと <ライトノベル> でパッと思い浮かぶモノとしては

 この高岡霧理に先手はない! ――新井輝『私の愛馬は凶悪です』
 一ノ瀬弓子クリスティーナはパンツをはいてない。 ――桜坂洋よくわかる現代魔法 ゴーストスクリプト・フォー・ウィザーズ 』


 などが挙げられるでしょうか。


 どちらも読み手の不意をついた書き出しながら、その一文だけでキャラクターというものを(あとに続く文章と合わせて)上手く表しているかと。 や、後者は 「おっ」 というより 「おいっ」 という感じかもしれませんけどそれもまた善し。


 関係ないけど、どちらも続きは何時出るんだよ!? 


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1313 (角川文庫)サウンドトラックサウンドトラック 上 (集英社文庫)サウンドトラック 下 (集英社文庫)ルート350私の愛馬は凶悪です (ファミ通文庫)よくわかる現代魔法(3)―ゴーストスクリプト・フォー・ウィザーズ (集英社スーパーダッシュ文庫)