「ディープ・ブルー」

 

 これといったストーリーもなく、淡々と海の生き物達の姿を観続けるだけの映画なので、興味のない方にはただの安眠誘導映像の塊でしょうが、私のように海洋生物というか海洋映像に対して理屈ぬきの興奮と好奇心を呼び起こされてしまう人間にとっては珠玉シーンの宝庫。


 様々蒼を見せる海原や、空から急降下して海に飛び込み魚を捕まえるオニミズナギドリ、竜巻の如く廻る回遊魚の群れに、それを巨大な口で一飲みにするイワシクジラ、満潮に乗じてアシカの子供を襲うシャチ、この世の生き物とは思えないほど美しい造形のリーフィーシードラゴン、光降る海を群れなして泳ぐクロトガリザメやアカシュモクザメ、ブリザードの中集団で身を寄せ合って卵を守るコウテイペンギン、隣のサンゴを生きたまま喰らうサンゴ、地上とはまるで別形体の進化をとげた深海魚、CGと見紛うばかりの壮大なマリアナ海峡などなど膨大な時間と労力を費やして撮影された映像の数々のなんと素晴らしい事か。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏も時に穏やかに時に荒々しく彩り豊かに場面を盛り上げていたかと。



 特典のメイキング映像やスタッフインタビュー集もドキュメンタリーとして見応え十分。厳しい自然の中、映像を撮り続けてきたプロフェッショナル達の姿を観る事が出来ます。つーか、椅子の上で踏ん反り返り足で舵を取るクルーや、深海潜水艇に乗って撮影できる事に大はしゃぎするカメラマン、氷棚が割れて漂流した南極のロケ隊、柵もなしにサメの群れの真っ只中で楽しそうにカメラを回すスタッフ、と色々な意味で只者じゃない方々ばかり。やっぱり、この手の作品は普通の神経の持ち主では創り上げられないでいわよね。正気にて大業ならず。
あと、本編より良いなと思う映像も幾つかあったように思います。特に深海潜水艇コックピット内からの映像は嬉しかった。