Vフォー・ヴェンデッタ

評価  :B-
満足度:B
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 予告編を観て「マトリックススタッフもSFXを映像のメインに使わなかったらイマイチなんかねぇ」と侮っていた私に“スカーレット・カーソン”を送り届けてあげたい。ガイ・フォークスの仮面と黒いコート&黒い鍔広帽子を身に着けてな!
 (あれは映画の本質を欠片も捉えてない予告映像が悪いんだっ)


 や、存外に面白い作品でした。予告映像ではディストピアな世界に抵抗する正義のヒーローアクション的な雰囲気を醸し出していましたが、実際には厳格な意味での「正義のヒーロー」というものは存在しておらず、アクションより陰謀劇がメインという一般ウケしそうにない作品仕様。アナーキズムテロリズム全体主義が吹き荒れる非常にカオティックな世界観にもう頭クラクラ。逆に言えばそれがツボに入る方には問題なく楽しめるかと。


 主人公(というか象徴)の「V」がとってもミステリアスで魅力的。「岩窟王」の如き復讐者であり、「オペラ座の怪人」の様な愛を知らぬ狂人であり、「ファウスト」の様に罪を贖うために社会に奉仕する咎人でもある。自覚を持った演劇性を含め非常に多面性をもったキャラクターなんですよね。


 で、物語の構成もそういう「V」を中心にイヴィー、刑事、官僚、名もなき民衆といったキャラクター達の視点が中心になっている。この見せ方や場面の仕込み、小道具の使い方、台詞回しがまた巧い。常に何らかの意味合いを持たせている無駄のない巧さ。シナリオはシンプルで解りやすく、でも演出はカオティックで複雑。


 個人的に印象に残った場面は(ネタバレ反転)約束の11月5日、TVの前には誰もいなくなったていたシーンと議事堂爆破と共に打ち上げられた花火を見上げながら群衆が次々にガイ・フォークスの仮面を外していくシーン
 そこにいたるまでのプロセスと意味にスゲェカタルシスを感じましたわ。

 
 右だとか左だとかそう言うものではない「意志の放つ熱」そーいうものの凄さを感じ取れる映画でした。