『ウルトラヴァイオレット』感想

 評価  :C
 満足度:C
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 ミラ・ジョヴォヴィッチがゲ■吐く(ネットしながらお食事中というお行儀の悪い、否、器用な方ごめんなさいというか伏字になってねぇなこれ)シーンみて「どこの香港映画かっ」と脳内ツッコミ入れたらほんとに半分くらいメイド・イン・ホンコンの映画でした。ロケ地上海と香港だし、スタッフの三分の一くらいアジア圏だし、なにより制作総指揮のひとりに香港映画じゃお馴染みのチャールズ・ウォン(サロン・フィルムズ)の名前があるし。


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 超アクション「ガン=カタ」を産み出し世界のボンクラアクションファンの絶賛を浴び、また、ディストピアSF映画としても非常に優れた作品だった『リベリオン』の監督&脚本カート・ウィマーの新作という事で、もの凄く期待して観に行ったのですが、正直、残念な完成度の映画でした。


 冒頭の段階で「これはちょー強いヒロインが群がる敵をバッタバッタと薙ぎ倒していく“だけ”のパルプSFアクションムービーです」としつこいくらいアメコミ作家によるアンソロジーイラストを観客に見せつけて説明していたので“覚悟”はしていたのですが、その覚悟をもってしても忍耐不可能なほど作品全体の構成が拙いです。


 ヒロインの掘り下げが足りない、場面の説明が足りない、物語がまともに繋がってない、アクションシーンの引き立てがろくにされてない、後半予算が足りなくなったのか明らかに失速気味、そのうえ映像も全体的にチープ等など問題点ありまくりでどうしちゃったのカート・ウィマーさん状態。本編90分というのもあれですか上映時間を短くして客の回転率を上げようという配給会社の陰謀ですか。そんな不幸な扱いは愚鈍なプロデューサーにズタズタの編集をされて凡作へと貶められた『リディック』で十分ですよ!


 んで、この映画の肝でありカート・ウィマーが最も力を注いだであろうアクションシーンも、冒頭のファージ部隊強襲や、重力を無視したアクション&バイクチェイス、教会での時間制限付きバトルなぞは“(VFXを使用した)アクション映画”として「良く出来ている」というレベルだと思うのですが、大多数が期待していたであろう“ガン=カタ”映画としてはリベリオン』に遠く及ばないというのが私の正直な見解。「単対多」というシチュエーションこそ『リベリオン』と同じなのですが、根本的な部分でアクションの性質が違うのですよ。『リベリオン』では「敵を殺す為の無駄のない動き“そのもの”を魅せる」ことつまり“過程”に重きを置いてたのが、今作では「べらぼうに強いヒロインが敵を殺したという“結果”を見せる」ことに変わっているといいますか。どうにもアクションそのものに面白味というか魅力に欠けているのですよね。ミラ・ジョヴォヴィッチのバレエの様な動きそのものは悪くないと思ったのですけれど。


 SF的小道具関係は観ていて純粋に楽しかったです。漫画『BLAME!』を彷彿とさせる次元圧縮技術による武器取出しや弾薬の給弾、重力レベラー、ガースの研究室、マガジン部に短刀が付いたグロッグ風サブマシンガン、殺菌消毒済みハンドガン、ダクサスの鼻栓なぞ頭の悪い、否、面白SFアイテム&演出にはワクワクするものが。つか、この手の小道具に弱いんです。


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 んー、細かい所には良い点もあるんですが、やっぱ全体的な完成度の低さがなぁ。残念也。
 今年は同じようなヒロインアクション物でしかもディストピアSFとしても一本筋の通った良作『イーオン・フラックス』を観賞済みだったというのも痛かったよなあ。