『プリミティブリンク』コンプリート

  「でもさ。試しもしない、努力もしない、なにもしない……じゃ魔法学園に来てる意味ってのが全く無いよ」(某キャラクターの台詞) 


   大丈夫。この作品の「魔法学園」って舞台装置としてすら機能してないから。(プレイヤーの声)
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評価  :C
満足度:D
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 ライトファンタジーとはいえ、あまりといえばあまりなシナリオの酷さ(世界観とか人物描写とかその他諸々)に、何度かギブアップしかけましたが途中「あ、ランドロークって、ハワイのイメージなんだ」と脳内解釈が成立してからは、諦観と若干の冷やかな感情をもってプレイすることができました。ええ、もう、このニホン人にヤサシイブンカとかイゴコチノヨサとかは、ファンタジー異世界というより、“観光地”ハワイのイメージに近いですよ。神社だってあるし。もっとも、ハワイ七社はハワイ移民の信仰と心の拠り所としての歴史的背景(それもかなりヘビーな)があるのに対し、ランドロークの神社はただの交流記念碑扱いなのですけども! ……このシナリオライター、幻想世界に対する愛が足りないと思ったら、日本文化にも愛が足りてない。そりゃ、異文化コミュニケーションな物語をまともに書けないワケですよ。ショートSF(「短く」「簡潔」「ボロが出ないうちに」物語を完結させましょう)向きのネタを作品世界の土台にしているあたり、無理があるというか、興醒めというか。不粋の極みだよなぁ。


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 あと、主人公の性格をろくすっぽ定めずテキストが書かれている風なので、言動がブレまくってるのにも参った参った。というか、キャラクターには一貫したスタイルを持たせときましょうよ。もしかしたらライターはギャルゲーっぽく「無味無臭な主人公」にしようとしたのかもしれないけど、だとしたら「無個性」と「性格を決めてない」というのは似て非なるものだという事を学んどいて下さい。ランドロークの説明&解明を全て六花に任せてるのも、読み手の興を削いでるんだよなあ。ハッキリいえば『カルタグラ』や『ピアニッシモ』と同じ「自分ではなにもやろうとしない主人公」と「必要な事を全て行なってくれる万能脇役」の図式に陥った駄目パターン。


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 Purple作品といえば「ストーリーは凡庸だけどキャラクターはそこそこ良い」という事で有名なのですが、このゲームに限って言えばキャラクターノベルとしても、首を捻る出来栄えだったかと。シオンルートくらいかな、及第点レベルに達してたのは。


 んー、キャラクターノベル調で異文化コミュニケーション作品を読みたくなって手を出したんだけど、失敗だったなあ。素直に『ドラグネットミラージュ』2巻が発売されるのを待つべきでしたわ。


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■参考
プリミティブリンク 初回限定版