『潮風の消える海に』感想

評価  :B-
満足度:B
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 セーリング・ディンギーという一風変わったガジェットこそ登場しますが、お話の内容は実にオーソドックスな青春ラブストーリー。もしくは群青モノとでも呼ぶべきか。
 

 小細工一切なしの凡庸な物語であるがゆえに、早狩武志さんの書かれるシナリオの持ち味というものをストレートに楽しむ事が出来る仕様。
 情景描写は分かり易くシンプルに。直截的な心情描写や台詞は避け、行間や会話の間などで登場人物達の心の機微を伝える手法は、時としてもどかしさを感じさせることもありますが、実に印象的で読み手に能動性(つまりキャラ対してに「コイツはなにを考えてるんだろう?」っていう疑問を積極的に持たせるってこと)を促す面白いやり方だと思います。もっとも、まだまだ拙い箇所も見受けられるし、構成的にもちょいと不親切なんで、手放しには褒められないのですけども。(ま、個人的にはそーいう部分もひっくるめて好印象だったということで)(いい加減だなおい)


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 登場人物の声を担当している声優さん達も良い仕事をされていたかと。実力もあるのでしょうが、ディレクターさんが台詞ごとの演技指導をしっかりしてくれていたのでしょうね。例えば「怒る」という演技ひとつにしても、場面によってちゃんと演じ分けされてましたし。つか、某シーンの莉佳子さんの台詞には描写どおりほんとに背筋が冷たくなりましたわ。関係ないけど莉佳子さんの乗ってるスクーターのエンジン音が、私にはカブのエンジン音としか思えなかったのですが、やはりベスパ辺りに脳内矯正しとくべきでしょうか。らったたらったた。


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 サルベージしたセーリングディンギーを修理してレースに出場するとかいう話ならまだしも、渡航に挑戦するっつー辺り素晴らしきバカだよなぁ。つか、レストアしたNSR50で日本一周キャンプツーリングとかそんなレベルの話じゃねえ!ロシアの巡視艇に問答無用で銃撃されてもおかしくない無謀航だよそれ!


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■参考
潮風の消える海に