「キングダム・オブ・ヘブン」雑感


てっきりハリウッドらしいスペクタクルエンターテイメント作品かと思っていたのですが、実際は政治的バランス感覚に優れた歴史戦争映画だったのに驚嘆。一般的な日本人の感覚には理解しがたい十字軍(キリスト教)とイスラム軍との“聖地”を巡る戦いの持つ意味や“神”という存在の受け取り方というものを実に解りやすく映像化したのはなかなかに見事。


特に「政治というものは奇麗事だけじゃダメなんだ」「人(もしくは上司あるいは神様)の言う事に従ってれば良いってもんじゃないつーか自分のケツくらいは自分で拭け」「平和万歳でも戦争になったら死ぬ気で殺んなきゃ相手に理解されないよ」という至極まっとうなことをきっちり描写していたのは素晴らしいです。
主人公がある人物に「エルサレムとはなにか?」と問い掛けたときに「無だ」という応えが返ってくるあたり、その事をよくあらわしていますわね。


投石器や攻城兵器を要いてのド派手なエルサレム攻防戦に怒号凄まじい騎馬戦など戦争描写もベターな面白が。リドリー・スコット監督らしい光と影(煙)の使い方が活きていたかと。チェインメイルにサーコートという十字軍スタンダードなコス萌え。