狼と香辛料

狼と香辛料 (電撃文庫)

狼と香辛料 (電撃文庫)

評価  :C+
満足度:B
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 ああ、そうだ。これもまたファンタジーのもつ姿のひとつだった。
その世界に生きる者達の生活や交流、様々なカタチを見せる心の遣り取り、そんな地に足をついたテーマをやさしく、時には厳しく物語る。
いまのラノベ市場では生まれにくい作品だったのに、望み期待するべき読者であった私がその事を失念していたとは、まったくもって不甲斐無い。や、これはとても良い作品でした。


 社会経験を積んだ大人ながらもまだまだ若さと甘さを残した顎鬚生やした「行商人」ロレンス。老獪だけど寂しがり屋で意外とスキの多い花魁口調の「賢狼」ホロ。そんな二人の微笑ましくも心温まる交流を通じて紡がれる「人」と「神」の物語。
主人公が商人だけあってエコノミカルなエッセンスも加えられているのですが、それをただの味付け程度に終わらせず、キチンと物語に組み込む手腕はなかなか見事。多少荒さも感じましたが、方向性と着地点を間違ってない上手い使い方がなされていたかと。

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 「狼と香辛料」というタイトルにある「香辛料」がどういう風に「狼」と掛かるのか楽しみにしてたのですが、「アノ出し方」はちょっと野暮ったかったかな。後付け感があるし説明的すぎます。んー、軽くニュアンス程度にとどめてて置いた方が粋だったんじゃないかな。作品世界のイメージはちゃんと読み手に伝わっているのですし。や、「意味」は良かったのですけどね。


この方にはこのままキャラクター描写力と抒情性に磨きをかけて欲しいなあ。