『新興宗教オモイデ教外伝 1』

評価  :C+
満足度:C+
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 原作が<セックス・ドラッグ・ロックンロール>を対岸に眺めながらお話を紡ぎだしたのなら、外伝は<ヱログロ・コーヒー・ジャズ>をモチーフに紡ぎだした即興悲哀喜劇。



 錯誤かもしれないけどね?


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 最初は『WHITE ALBUM』以来、久々に触れる宇陀児節/読み手のリズムをトコトン崩しまくる独特の話法に面食らいましたが「そういやこんな書き方する人だったなあ」と思い出してからはスルスルと読了することが出来ました。 つうか、これ文章/宇陀児作品に抗体持ってないと読むの辛いよなー。  わたしゃ読んでる間中、観客にケツ向けて自己の音楽世界に没入するマイルス・デイビスの姿(それも病み上がりで体調が絶不調時に出演した『サタデーナイトライブ』(※ジャズマニアである友人の秘蔵ビデオ)のヤツ)が脳内でエンドレス再生されてましたですよ。
 「譜面(原曲)なんか知るか! オレはオレの中にある今の音色を奏でるだけだ!」みたいな?


 オリジナルに負けず劣らず感性のおもむくまま衝動的/行き当たりバッタリ的に筆を走らせたその心意気や良し!とは思いますが、なんというか(随所に本元へのオマージュが見受けられるものの)『オモイデ教』というより『雫』や『リアライズ』の外伝小説と称した方がシックリくる内容でしたわねえ。
 著者の経歴を考えれば「さもありなん」という感じだけれど、正直ライトノベルのレーベルで刊行されるのはナニか(意訳例:発売時期を10年くらい)間違っている気も。 全編に漂う“ノスタルジック”と呼ぶにはあやふやな香り/文脈についてこられる読者って自ずと限られてくるでしょうに。 てか、「1巻」ってこのノリで本気でシリーズ化するつもりなのか!?


 あと、大槻ケンヂさんの解説は優しさと残酷さで出来ていると思う。 多分比率2:8くらい。

  

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◇原作
[rakuten:book:10415909:image]
 紡がれる世界に対して常に無色透明な存在であり続けた主人公「八尾二郎」の姿が哀しくも美しく。
 (外伝主人公の「キュー」とヒロイン「いちご」という名前も原作にあやかっているだろうなあ)


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◇書影
新興宗教オモイデ教外伝 1 (1) (ガガガ文庫)