『極東綺譚 1』 『アウトサイダー』

衣谷遊『極東綺譚 1』 評価:C++ /満足度:B-
 「この分目を知ること、肝要の花なり」。 さあて<分け目>はどこにあるのかね? そもそも<花>ってなにさ?
 
 明治末を舞台に繰り広げられる海洋幻想異端民族史。 随所に仕込まれた眩惑のレトリックが隠し味のひらたくいえば<酔狂>なお話。 「草薙の剣=塩」という見立ては大胆すぎて笑った。 (でも、あのエピソード最大のレトリックは「ヒトの涙もまた塩なり」ってな部分) ほんとかよ? 作者が画力にまかせて初っ端からトバしまくるので、漫画馴れしてない方には読み筋捉え辛い作品かもしれませんが。 まあ、そんな時は無理に理解しようとせず、あるがままを感受すればいいのではないかと?

 衣谷遊さんの漫画にまともに触れるのは『白龍』以来だけど、この作品でも<歳の差カップリング>が成立しててニヤニヤが止まりませんつーマイノリティな意見は心の内に秘め置く。 ドスン。(比重がでかいらしい) 


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◇田邉剛『アウトサイダー 評価:C++ /満足度:C++
 H.P.ラヴクラフトの同名小説やチェーホフ『中二階のある部屋』、ゴーリキー『二十六人の男と一人の少女』を漫画化ですってよ! なんて奇特な!

 というわけで手に取ってみるっ。 んむむ。 不条理だろうが理不尽だろうが欺瞞だろうが虚無感だろうが<ソレ>の正体がなんであろうとヒトを構成するモノ一切合財妥協なく容赦なく作品の中にズガッと描き表す/表そうとするこの絵力(えぢから)は凄いんじゃないのかしら? ……とか思いつつ読み進めていたら、作品集後半に「怪異を絵の中に封じ込めるお坊サマ」漫画が短編連作で掲載されていたという条理。 然り。 然り。 然り。 曲なく自分の中にあるモノを素直に出せる漫画家って男性じゃ珍しいねえ。
 悪くはないけどもうちょい欲のある話が読んでみたいな。


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■書籍データ
[rakuten:book:12056043:image]極東綺譚 1 (マガジンZコミックス)アウトサイダー (ビームコミックス)