『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 上下』

桜庭一樹/杉基イクラ砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 上下』 評価:C++ /満足度:C+
 

 おお、これは巧い。


 ストーリーは原作に忠実なのですが、客観的に状況を描写できる漫画の強みといいますか。 原作では <なぎさ> のか細く小さな視点を通してしか窺い知る/想像する事しか出来なかった、少女を取り巻く世界の存在感が段違いに増していますわね。
 風景描写を含めた雰囲気作りはもちろんのこと、キャラクターたちの地に足ついた一個人としての描き起こし具合が実に見事。


 つか、私の中では <藻屑> というヒロインはもっと足元の定まらない世間ズレしたふわふわした少女のイメージがあったので、この漫画で描かれる <どこにでもいそうな少女> の <藻屑> にはちと驚いたり感心したり。 「ああ、こんな子が絶望の中に生きていたのか」 と。
 救えなかった事を嘆く教師の姿は、大人であっても手の届かない深淵がある事を、無力感を強く刻みつけられます。


 甘えることも、泣くことも、叫ぶことも出来ない。 そんな魂を歪めるほどの苦痛を子供に与えたらいかんですよねえ。 


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 あれ? 私、原作でもこんなにキャラクターに入れ込んでましたっけ?


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砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 上 (単行本コミックス)砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 下 (2)