中里十『どろぼうの名人』

 うたかたのまどろみの中で紡がれる甘くやさしく包み込まれるようなステキなお話。 穏やかな世界に時折浮かび上がる <無常の切なさ> という隠し味も程好く効いております。
 百合物というニッチ(最近ではそうでもないか?)な分野の作品ですが、気配りの行き届いた文章/描写*1なので不慣れな方でも、さほど戸惑わずに読み切れるのではないのでしょうか。 たぶん。  
 (むしろ 「読まないのは勿体無い」 くらい吹いてもいいかもしらんね。 多少の覚悟は必要だろうけども!)

 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 語り手の主人公/初雪は面白い子ですなあ。 天然系のとぼけたスタンスで物事を童話になぞらえて解釈しようとするファニーな思考ツールの持ち主なんだけど、なにげに冷静で察しがよく、状況から的確に真実/必要な情報を見つけ出せる。 理性と感覚の使い分けが巧いと言いますか。 平たく言えば頭の回転が速い子なんですよね。 ぎゅぎゅーん、と。 ま、これぐらい出来なきゃ <魔女の妹> は務まらないし寵愛も受けられない、という事なんでしょうが。 

 読んでて 「こういう子が主人公の探偵小説が読んでみたいなー」 とか思っちゃいましたよ。  


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 イラストもキュートやね。

 どすん、どどどどど。

 ああ、そんな感じでしたわ。 人生のレールががっちょんと切り替えられた的な。
 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
どろぼうの名人 (ガガガ文庫 な 4-1)

*1:「百合の道標」的意味ね