ラーメンズ第16回公演『TEXT』

 一昨年の大晦日NHKで深夜放送されたものの寝落ちで見過ごして新年早々ブルーな気分にさせられた公演がようやっとディスク化。 とうぜん購入したのはBlu-ray版。
 ハイデフ画質だから折れたグラスファイバーの断面もクッキリ見えるよ! (※ついでに、これまでのDVD版より若干音質がクリアになり二人の声にハリが出てきたように思います)


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 タブロイド紙を意識したパッケージデザインとTEXTという公演タイトルからも察せられるようにワードプレイ/言葉遊びをメインに据えた内容。 単純に言葉だけにとどまらず、紙面上で表現される文章的な面白さをも舞台上で再現/構築しようと試みたという印象で、大笑いさせられつつも時折覗かせる奥深さにムムッと唸らされる公演ではないかと。


 50音訓を繋ぎ合わせてショートドラマ風に仕立て上げてしまうという言語そのものへのおちょくり加減と、伝言ゲームで再現された社会構図を反転させるマッチポンプなオチが素晴らしい「50on5」。  二つの異なるシチュエーションのコントを特定のワードでリンクさせる事で一つの流れに纏め上げてしまう「同音異義の交差」は端正に解かれていくクロスワードパズルを眺めている様な不思議な距離感。
 逆に「条例」は一つの基本パターンを条件付ける事で再分化していく形式で、この中では短歌条例とハリウッド条例が特に笑ったかな(短歌→お経のコンボがツボ)。 ミュージカル条例の小技の利いた演出の数々も好いのです。 うやうや条例は迂遠な台詞回しに(主にカタギリさんが)トチリやしないかとハラハラ。 そりゃ、コバケンさんも固唾を呑んで見守りますわ。


 「スーパージョッキー」はお馴染みのヒロシと父さん系ひとりドタバタ劇で、ハメを外してトコトン暴走するカタギリさんの姿を楽しめばいいと思うのです。 オマケver.ではカタギリさんのテンパった姿もみられますよ! つか、突発的出来事に対してアドリブを利かせるのはホント苦手な方なんですな。 親しみやすいといえば親しみやすのですけれど。  
 「銀河鉄道の夜のような夜」は可笑しくて、うつくしくて、やさしくて、そして悲しいお話。 台詞を朗読調に変え、掛け合いにも間を置き意図的に無音状態をつくりだし見事に「静かな夜の空気感」を生み出しているのは舞台という場所を熟知しているラーメンズだからこそ成せる技でしょうか。 公演のラストを飾るに相応しい芸術的コント/演目。


 一番気に入ったのは「不透明な会話」かな。 「赤は進め青は止まれ」「逆非不透明人間」などの真面目に言葉のイメージを捉えようとするとゲシュタルト崩壊を起こしそうな逆説につぐ逆説のロジック展開がどことなくボルヘス的戯れを感じさせて面白いのです。 曖昧な言葉から生み出された観念的世界観が別の言葉によって塗り替えられ喪失されていく様にこそワードプレイの真髄があるのやもしれませぬ。 なんつて。


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ラーメンズ第16回公演『TEXT』 [Blu-ray]

ラーメンズ第16回公演『TEXT』 [Blu-ray]

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