六塚光『ペンギン・サマー』

 田舎で語り継がれる伝承をテーマにした夏休み自由研究SFといった読感。 正直、第一章の箸にも棒にも引っかからない読者置いてけぼりの日常描写っぷりを目にした時は「やべ、ハズレか!?」と思いましたが、第二章でおぼろげながら作品の構成が見えてきてからは巧く巻き返してくれたかと。 章毎に「日記」「ボイスレコーダー」「会話ログ」など語り口調/媒体を変え、伝言ゲーム的に物語の全貌浮き上がらせていく手法がスクラッチブックを制作している様でなかなかに楽しかったですね。 全ては過ぎ去りし時と共に……といった風情のラストも好み。
 ただ、全体的にSFとしての説得力、伝承としての細部の造り込みが甘いのが残念。 いや、作品の性質上、SFガジェットの弱さには目を瞑るとしても、伝承部分については実在の昔話を交えて、もうワンステップ踏み込んで書いた方が物語としての厚みが出たと思うのですが。 てか、「漂着した外国人」「鬼」「お酒」「酔わせて成敗」ときたら八岐大蛇より酒呑童子の方が伝承的にもメジャーじゃないのかしら?
 ともあれ、帯に一本釣りされて手に取った作品でしたが意外と楽しめたので満足なのです。
 

 あと、どーでもいーことですが、グギギの台詞は何故かナチュラルにCV.大塚明夫で脳内再生されました。 スネェーーク!!(ペンギンです) 


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 ペンギン・サマー (一迅社文庫)