西川魯介『ヴンダーカンマー 1』/滝沢聖峰『ばら物語 2』/伊藤潤二『ブラックパラドクス』

西川魯介『兵器局非常識器材関連開発室 ヴンダーカンマー』1巻
 Wunder Kammer(驚異の部屋)というよりトンデモ奇想博物誌といった風情のオカルトアーミー超科学&西川暗黒神話体系漫画。 どんな胡乱で怪しげな話も「まあ、ナチスドイツだしね」で納得できてしまう世界観はスゴイですなあいやスゴクないですむしろアタマがおかしいですね。 (主に作者と読者が)
 相変わらず「アルトノイ」やら「踊る人形」やら「ウンディヌス」やら「古のもの」やらと心躍る細かいネタが満載。 ただ、クトゥルフ神話でもどちらかというとC・A・スミスのツァトゥグア神話系寄り気味かな。 そういやC・A・スミスと同じく西川魯介作品自体にもE・A・ポオの影響がたま〜に垣間見えますのう。 『怪物さん』でもポオから引用したと思わしき台詞がありましたし。 


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
滝沢聖峰『Tale of Rose Knight ばら物語』2巻
 イタリア戦争を背景に紡がれる騎士道浪漫活劇。 イタリア戦争については塩野七生チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』でちょっろと触れた程度(そもそも設定されている時代がズレてますし)の知識しかないのですが、紡がれる文脈の読み筋が『三銃士』かはたまた『ゼンダ城の虜』かといった具合の古典的中世冒険活劇譚調なので、さして己の無知に頭を悩ませる事もなく楽しめるようになっているのはありがたいのです。
 錯綜する組織の思惑と個人の思惑の陰謀劇や、生き別れの双子同士の入れ替わり、出生の秘密など様式美とでもいうべき王道展開と入念な時代考証により構築されたフィクションとしての中世史観のバランス加減の妙とでもいいますか。 P83〜84のモノローグの入り方とか巧いですよね。  


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
伊藤潤二『ブラックパラドクス』
 伊藤潤二漫画らしく期待通り「次の一手が読めない」展開で面白いのだけれど期待以上ではなかったなあ。 いや、作品としては全然悪くないのですが。 つうか登場人物たちは何故にああもスタイリッシュなポーズをとりまくるのですか? 「ゴーー」「ボン」「シュッ」(←このシーンが特に男前過ぎる)


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ヴンダーカンマー (1) (リュウコミックス)Tale of Rose Knight―ばら物語, Vol. 2ブラックパラドクス (ビッグコミックススペシャル)