小林源文『Cat Shit One '80』1、2巻

 言わずと知れたベトナム戦争を舞台にした(鋼鉄製の)鳥(と)獣戯画シリーズの続編。
 読まねばなるまい。 ……と思いつつ今の今まで積み本化していた今作品。 アニメ化されるという話を(今頃)小耳に挟んだのでようやく着手するに到った次第。


 ベトナム戦争を潜り抜けたお馴染みキャット・シット・ワンメンバーが、今度は冷戦末期の80年代――フォークランド紛争アフガニスタン戦争、経済成長を始めた中国(アジア諸国)――を舞台にそれぞれの戦いを繰り広げていくのですが、政治軍事に疎い私にも解りやすい概要と話し運びで気楽に読める作風なのは流石といったところでしょうか。
 パッキー達の「歴史的場面に居合わせた脇役たち」というヤングインディジョーンズ的役所と、新兵ミーシャの成長物語としての読み筋を並列させているのも面白い趣向かと。
 神の名を叫びながら突撃してくるタリバンおっかねー。 キャリバー50の狙撃に対戦車ミサイルで対抗するイギリス軍ハンパねー。


 ただ、シェーフィールド沈没の件が結果/損害とその後の対艦ミサイル対策についてのみ触れる程度にすまされていたのがちと残念。
 イギリスの駆逐艦が「仲が悪い事をジョークに出来るくらい仲が好いフランス」製の攻撃機から発射された、これまたフランス製の対艦ミサイルで仕留められ、沈む船から脱出できた乗組員たちが救助を待つあいだ『Always look on the bright side of life』を歌っていたというエピソードをキャット・シット・ワンの絵柄で読めるものと期待していたのに!(そんなのは貴様だけです)
 や、でも経済政策に失敗したアルゼンチン軍事政府の当て付け同然に始まったフォークランド紛争に対する、イギリス軍兵士のモチベーションの低さ*1を表すにはうってつけの題材だったと思うのですよ。
 やはり描かれなかったのは漫画の趣旨から少々外れてしまうせいだからかしらん?


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◇Cat Shit One Movie Trailer - The Animated Series


 「かわいい顔して容赦ねえ!」とツッコミ入れつつ視聴して、最後の「実在の動物を一切使わずに撮影されています」という一文で不覚にも大笑。
 あー、まあ、確かにその辺ちゃんとしとかないと、色々うるさいでしょうからねぇ。 人間よりも動物の権利の方が上というお国もありますし。
 つーか、ネタがギリギリすぎるよ! もっとやれ! 
 それにしてもアニメ版だとパッキー達は民間軍事会社の傭兵なんですな。 ボタスキーのルーキーな言動をみるに漫画とは別設定の完全オリジナルっぽい? むー。



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Cat Shit One'80 VOL.1Cat Shit One'80 VOL.2

*1:アルゼンチン軍兵士の敵対感情も低かったという話も聞きます。